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Chiwata's Diary
2006/09/20 11:38 瞳を閉じれば

9月も半ばを過ぎ、朝夕の風がひんやりしてきました。
半袖ではちょっと肌寒いくらいです。
気が付けばウチの周りでも虫の声が聞こえています。

今月の頭からしばらくの間、佐賀に帰っていました。
急には信じられない、そして信じたくない、それでも受け止めなければいけないその現実を、ゆっくりと心に擦り込ませるためには必要な数日間でした。

生まれた時から両親が共稼ぎだった僕は、同居していた“ばあちゃん“の背中で育ちました。
幼少期の白黒写真には神社やお寺、公園、遊園地などで僕一人が写っているものが多いのですが、きっと、ばあちゃんが僕の手を引き、色んな場所に連れて行ってくれたのでしょう。
幼稚園に一人で行けず、入り口まで付いてきてもらったことも多々ありました。
雷の鳴る夕暮れ時、弟と3人、居間の真ん中で輪になって手をつなぎ、通り過ぎるのを待ったことも。
小、中、高、と、学校から家に帰るといつもばあちゃんがいてくれて、寂しいと思ったことはありませんでした。
色んな友達を連れて帰ると、決まって、一人一人に「メシは食べたかい?」と分け隔てなく愛情を傾けてくれました。
上京してからも何かと僕の事を気に掛けてくれていたばあちゃん。
プロデビューした時は自分の事のように喜んでくれて、親戚や友達、近所の人達にまで、自慢げに話していたそうです。

4年ほど前から入退院を繰り返していて、僕も佐賀に帰れる時はほんの少しでも会いに行っていました。
最後に顔を見て1ヶ月経った9月某日。
午前7時に鳴り響いた実家からの電話で、ばあちゃんが他界したことを知らされ、佐賀へ帰りました。

そのあとの細かい事は省きますが、一つだけ。
斎場での最期のお別れの時に、御会葬いただいた沢山の方々を前に、喪主である父親の代わりに僕が挨拶をさせてもらいました。
その最後にどうしても一曲送りたくて、『あなたに逢いにいこう』をアカペラで唄わせていただきました。
この曲は元々、遠く離れたばあちゃんのことを想いながら作った唄だったのです。
実家を飛び出した身で、父や母や弟に色々と「あぁだ、こうだ」と口を挟んだり、大事な時に力になれなかったりと、今振り返ると申し訳なかったなぁと思うところもあるのですが、今回、しっかりと見送ることができたことが、まずは何よりホッとしているところです。

葬儀から数日経って、ばあちゃんの部屋の押し入れを整理しました。
奥深くから一冊のノートを見付け、めくってみたところ…。
今から数年前に書かれたであろう文章が。
『偉功くん 明けま志て お目出度う 長い間 御無沙汰していますが 元気でせうね …』
東京の僕に当てた手紙の下書きと思われるその文字。
鉛筆で書かれたその一文字一文字に込められたばあちゃんの想いを想像しながら、別れの悲しみとこれまでの感謝の気持ちを胸に刻みました。

瞳を閉じれば今も“ここ”にばあちゃんがいます。
あなたがいてくれたから僕が今ここにいられるのだと思います。
命というものは巡って行くものだと思います。
僕らは、色々な命に生かされているのだと感じました。

皆さんも今までに色々な別れを経験されてきたことでしょう。
そしてこれからも、乗り越えて行かなくてはいけないことなのでしょう。
悲しくないと言ったら嘘になりますが、今、僕に与えられた“この時”を自分らしく生き抜いてゆくことが、すべてだと思います。

ばあちゃん、ありがとね。

追伸:この場にプライベートの事を載せるのもどうかと思いましたが、あえて今のありのままの気持ちを伝えたくて書かせてもらいました。

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